化学工学会 粒子・流体プロセス部会
気泡・液滴・微粒子分散工学分科会

代表コラム(4号)

MMPEまであと145日!

 日本の教育課程では、まず、整数の足し算、引き算、掛け算、割り算を習います。はじめは整数ですから、数は離散的です。しかし、割り算で整数では説明できない数が出てきて、小数や分数を学びます。これを、まとめて有理数とします。高校になると、有理数であらわせない無理数を学び、数は稠密になるとして微分積分を知ります。数学で稠密を受け入れるには無限の存在を許す必要がありました。18世紀のオイラー、ニュートン、ライプニッツは天下り的に無限を許す立場だったようです。その後、19世紀のε-δ論法、超準解析にて稠密や微分積分は厳密なものと認識されました。ところが大学に入ると、数学で計算できる解法が限定的であり、コンピュータシミュレーションを学びます。ここで微分積分をコンピュータで扱えるように離散化します。もちろん分かりやすく学べるように、数学は構成されていますが、離散から始まって、離散に戻るかのように感じます。もちろん、数学者がいて、微分式を離散的に扱っても良いというLaxの同等定理があるおかげで、安心して離散化しているのです。流体や連続体を学ぶのにここまで遠いのかと後になって思いました。
 話題は変わって、2024年に物流問題がニュースになっています。トラックの運転手さんの残業が規制され、物を運ぶ担い手が不足している問題です。これをどのように進めるか、運輸会社さんをはじめとする産業界が効率化、合理化に知恵を絞られています。コンピュータでも効率化が必要になっているのをご存じでしょうか。2024年の論文によれば、スーパーコンピュータでレイノルズ数が約8000の流れを計算するのに、現在だとボーイング777で太平洋往復に匹敵するCO2を排出するのだそうです。計算機のCPUやメモリバンドのハードウェアの改善によってCO2は減るのですが、ソフトウェア上で計算効率を改善する試みがあります。例えば、計算した値はメモリに送るのですが、このメモリの読み込み、書き込みがネックになることがあります。そこで、できるだけ、CPUにアクセスしやすいメモリ(キャッシュメモリ)に値が輸送できるよう、アルゴリズムを工夫します。埋め込み境界法やカットセル法といった構造格子が見直されているのは、そういう背景もあります。
 今後はDX(デジタルトランスフォーメーション)やAI(人工知能)が闊達になると同時に、これに伴ってDXやAIの電力問題解決も必要になると思います。さらに今でも流体の有名な式、Navier-Stokes式は数学的に解が存在して、滑らかであるかどうかは分かっていません。ミレニアム懸賞問題の一つになっています。混相流では相界面という不連続性が問題をさらに難しくします。このように、いろんな問題がこれからも待ち構えていますが、MMPEで何か発表いただけないでしょうか?