化学工学会 粒子・流体プロセス部会
気泡・液滴・微粒子分散工学分科会

代表コラム(3号)

MMPEまであと173日!

 今回は本の話です。最近は便利な社会になって、LambのHydrodynamics (1932)やClift, Grace, WeberのBubbles, Drops, and Particles(1978)などの名著がインターネットで買える時代になりました。進化もすごいのですが、これらの書籍の示唆が21世紀になったのに全く色あせていないことにも驚きます。あれだけ激しいウェイクを生成するキャップ型気泡の上昇速度が、ベルヌーイの式で導出されるのに感動したのは私だけでしょうか。
 日野先生の「流体力学」や中村先生の「乱流現象」でも紹介された有名な話ですが、Lambは1932年の“Hydrodynamics”刊行後、「私は老人であり間もなく神に召されるであろう。その時天界の隅より気にかかる二つのことがある。一つは電気量子力学であり、もう一つは乱流である。私は前者については楽観的であるが、後者については悲観的である」と語ったそうです。時は量子力学の世界が洋々として開けつつあった時代です。もちろん、流体力学でも測定技術、シミュレーション技術、データドリブン技術は格段に進歩したところがあります。しかし流体力学に完成はないのではないかと思うこともあります。だからこそ、かえって魅力を感じてしまうのかも知れません。
 もう一つ。播田さんの「日本史サイエンス〈弐〉」によりますと、日本が明治維新や戦後復興で急成長を成せたのは、日本人が読書をするためだそうです。時代劇で江戸時代の町人が瓦版を読みますが、世界からみるとあの時代、当たり前の光景ではなかったそうです。だからこそ、鎖国を解いたのち、最新の科学技術を吸収できたといいます。最近は日本の科学技術の低下と言われますが、それでもまだ新聞の発行部数は多く、読書時間は米国の2倍だそうです。昭和生まれの私は紙に印刷された本を本棚に入れ、機会を見つけては本屋を回ってしまうのですが、どこに何が書かれているかを頭に入れておけば、電子書籍で持っておくのもいいかもしれませんね。
 学生時代、あるヨーロッパの教授の先生が「混相流はNever Ending Storyだよ」と言ってくださったことを覚えています。ぜひ、MMPEが魅力的なNever Ending Storyとして発展されたらいいなと思います。また、MMPEで参加者におすすめの一冊を尋ねてみてはいかがでしょうか。